花火いちど空にのまれてから開く 進藤剛至
瑠璃色の地球巡りて燕来る 中村恵美
花吹雪人を助ける覚悟かな 竹岡俊一
草じらみつけ独り身の無頓着 西尾浩子
風だけが秋に気づいてをりにけり 笹尾玲花
啓蟄や実験室はガラス張り 塚本早苗
空に星地に君のゐて冬薔薇 葛原由起
句碑抜き今宵の銀河濃かりけり 池末朱実
静寂はラグビーボール立ててより 松村史基
ラガーらの目に一瞬の空戻る 阪西敦子
壱
野分会の俳句
卒業の子らの母にも母のあり
五月闇列車光の箱となる
蜩やパイプオルガン止みてより
永訣の朝寒紅を薄くひく
葛原由起
高松生まれ。ホトトギス初投句2020年。NHK文化センター等で英会話講師、通訳、G7サミット等で外国大臣リエゾン。裏千家インターナショナルアソシエーション幹事。
ポラリスも北斗も朧なりしかな
うみへび座全容見せて夏に入る
夜業の灯消えて頭上に白鳥座
聖夜待つ空に一等星七つ
池末朱実
1963年11月、京都府木津川市生まれ。帝塚山短大卒業。
ホトトギス初投句は、1992年。
コロナ禍が落ち着いたら、星のソムリエの資格を取ろうと思います。
風船の二度と戻らぬ高さかな
冬晴をフランスパンが通り過ぎ
一曲の静かに終はる白雨かな
鷹の目のゆつくり回しゆく大地
松村史基
1966年静岡県生れ
ホトトギス投句歴:30年
俳句活動:はぼ朝日俳壇
受賞歴:朝日俳壇賞(2008年,2020年)
趣味:映画鑑賞、料理、散歩、選句
はつなつの隣の人が読む本は
水中花今宵叫びてゐるごとく
木目よく見えて文月の机拭く
またボール転がつてくる青写真
阪西敦子
1977年生まれ。祖母の勧めで7歳より『ホトトギス』児童・生徒の部に投句。2010年日本伝統俳句協会新人賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』『ホトトギスの俳人101』他。
釣堀の魚も吾も慣れてをり
白服の整列ここぞ別れ際
逃げながらあの子を狙ふ水試合
文月や手帳の隅に句を拾ふ
竹岡俊一
1968年生まれ、愛媛県松山市出身です。よろしくお願いいたします。
とんちんかんがうがう鞴祭の音
初雷や土軟らかくする響き
永久歯生え変はる子の手に氷菓
冬帝や荒波の音闇に聞く
西尾浩子
大阪市在住 河内野在籍
母の勧めで俳句をはじめました。
なかなか上達しませんが、いろんな方々との出会いが財産です。
ただ日傘差しかけくれしだけのこと
日脚伸ぶ頃に嫁いできてくれて
まだ心開いてくれぬ春の霜
これよりは句夫婦なりて寒き日も
笹尾玲花
2017年ホトトギスへの投句を始める。翌年野分会入会。
黄昏大好き、夕焼けウォッチャー
緑蔭や地球に長居しすぎたり
客席といふ奥行きや初芝居
卯波立つプラスチックの洗面器
競漕や視界一面奴の背
塚本早苗
1963 倉敷市生
岡山県文学選奨 倉敷市民文学賞
ITに弱い堂々たる幽霊会員です
居開帳こんな仏に祈りゐし
夏至の日の暮るゝを待たず灯しけり
私にも虚子にも落つる一葉かな
息の色しづかに抜けて雪の道
進藤剛至
1988年 兵庫県生まれ。第7回「俳句甲子園」全国優勝。第25回 日本伝統俳句協会新人賞受賞。芦屋市芸術文化活動表彰受賞。日本伝統俳句協会 青年部部長。共著『現代俳句精鋭選集18』。
目離しのならぬ子もゐて雛を出す
ふくらんでふくらんで花大樹なる
短夜や星の軌跡を円窓に
筒の水まあるく泳ぐ目高の子
中村恵美
私の俳句ライフは今思えば幸運なことに三十代前半から始まりました。子育て奮闘中は投句のみの期間も長かったですが、細くても諦めずに続けてきて良かったです。句友という宝物にも感謝。